フィンランドに学ぶ建設・解体廃棄物リサイクル
― AI選別と制度が支える資源循環の現場 ―

今回も本コラムをお読み頂き誠にありがとうございます。日本シーム 岩渕でございます。今回のコラムは初登場の国と初登場のテーマを扱いたいと思います。お国はフィンランド、テーマは建設・解体廃棄物です! いつも通りいきなり話が脱線します。私は海外に行くと必ずその国らしい料理を、その国らしい店構えのレストランでいただくことを楽しみにしていますが、ヘルシンキでは可愛らしいお弁当を楽しみました。その名も“YAMI YAMI SUSHI”です。美味でございました。さて、話を戻します。

今回私はフィンランドのリサイクル事業者である Remeo社 のリサイクル施設を視察させて頂きました。欧州では建設・解体廃棄物(いわゆるC&D)のリサイクルが政策的にも産業的にも重要な分野となっています。そこで今回は、C&Dのプラスチックリサイクルを取り巻く欧州の仕組みについて、制度と設備の両面から触れてみたいと思います。

欧州で重要性が高まる建設・解体廃棄物リサイクル

欧州におけるC&Dは廃棄物全体の中で最大級のストリームであり、断熱材、防水シート、配管、床材など様々な材料が含まれています。EUではこの分野の資源循環を促進するため、C&Dの再利用・リサイクル率を70%以上とする目標が掲げられており、各国の廃棄物政策の重要な指標となっています。さらに近年では、解体前に建物の資材や有害物質を確認する調査や分別解体の推進など、建物を「将来回収される資源の集合体」として捉える考え方も広がりつつあります。こうした制度的背景が、建築廃棄物からできるだけ多くの材料を回収するという処理施設側の技術革新を後押ししているのかもしれません。

実際の処理現場を観察すると、欧州のWEEEリサイクルでは前処理と高度選別による詳細選別を重要視していることが分かります。まずは初段のプリソーティング工程があり、その後プリシュレッダー、2段目のプリソーティングを経て、プラスチックと金属に選別、ここまでが前処理です。そしてプラ側は専門のリサイクラーへ出荷され、金属は更なる破砕と複合的な高度選別を組み合わせることで高純度の資源回収を実現する仕組みを採用しています。

これに近い手法は日本の家電リサイクラーにおいても広く実践されているものであり、欧州特有の手法というよりは、WEEEリサイクルにおける国際的な共通フローと捉えるべきかもしれません。

年間約12万トンを処理するRemeo社の大規模施設

ヘルシンキ近郊にあるRemeo社の施設も、こうした欧州の潮流を象徴する設備の一つと言えます。同施設は建設・解体廃棄物と商業系廃棄物を処理する高度に自動化された選別工場で、建設廃棄物だけでも年間約12万トンを処理する能力を持っています。建設廃棄物ラインの処理能力は1時間あたり最大およそ30トンとされており、欧州の建設系リサイクル施設の中でも比較的大規模な部類に入ると言えるでしょう。

AIロボットと多段階選別が支える高精度な資源回収

驚かされたのはAIを活用したロボットアームによる選別です。コンベヤ上の廃棄物をカメラやセンサーで識別し、木材、金属、石材、プラスチックなどを自動的にピックアップして回収します(AI選別に関してはぜひ2025年10月号のコラムをご参照ください!)。

この施設では12基のロボットアームが稼働しており、複数のロボットが協調して作業することで、施設全体では最大で1時間あたり約2万4千回のピッキングが可能とされています。こうしたロボット選別は人手による選別に比べて安全性が高く、かつ回収精度を安定させられることから、欧州では建設廃棄物処理施設における新しい標準技術になりつつあるようです。

さらに同施設ではロボットだけでなく、ドラムスクリーン、バリスティックセパレータ、磁選機、渦電流選別、光学選別など複数の分離技術を組み合わせた多段階の選別ラインが構成されています。建設廃棄物のように形状や材質がばらつく原料に対して、機械選別とロボット選別を組み合わせることで資源回収率を高めるという考え方は、欧州のリサイクル施設における一つの方向性になりつつあるのかもしれませんね。

資源回収率が競争力につながる欧州の市場構造

さらに印象的だったのは、こうした技術的な取り組みが単なる環境対応ではなく、事業競争力として機能している点でした。現地での説明によれば、Remeo社は建設廃棄物リサイクラーの中でも比較的高い資源回収率を実現している企業の一つであり、その点が建設会社などの排出事業者から選ばれる理由になっているとのことでした。欧州では建設廃棄物の処理費用は排出者である建設会社や解体事業者が負担することが一般的であり、廃棄物の引き渡し先となるリサイクラーは排出者が選択する形になります。

このため処理業者にとっては、単に廃棄物を受け入れるだけでなく、どれだけ資源として回収できるか、あるいはどれだけ環境負荷を低減できるかといった点が、顧客から評価される重要な要素になります。結果として、より高度な選別設備を導入し資源回収率を高めることが、処理事業者の競争力につながる構造が生まれているのです。

日本の建設系プラスチックリサイクルへの示唆

一方で日本の建設廃棄物処理を見ると、コンクリートや金属のリサイクルは非常に高い水準にあるものの、建材に含まれるプラスチックについては必ずしも同様の仕組みが確立されているとは言えません。建設系プラスチックは材料の種類が多く、汚れや複合構造の問題もあるため、現実にはエネルギー回収に回るケースも少なくないのが実情です。もちろん日本でも建設リサイクル法などによって一定の分別は行われていますが、欧州のように資源回収率が処理事業者の競争力として評価される構造は、日本のリサイクル市場にとっても非常に興味深い事実だと思います。

欧州の取り組みを見ていると、建物は単なるインフラではなく、将来回収される資源の集合体として認識されつつあるように思われます。解体段階での分別、AIやロボットを活用した高度な選別設備、そしてリサイクル率を重視する制度や市場の仕組みが組み合わさることで、建築廃棄物からの資源回収が一つの産業として成立しているのです。今回視察したRemeo社の施設も、その象徴的な事例の一つと言えるでしょう。昨今、建築物の更新が進む日本においても、こうした視点は今後ますます重要になっていくのではないかと感じました。

最後に、ヘルシンキ空港にある怪しい日本料理店、非常に気になるのでどなたかのレポをお待ちしております。