“回収の先”を設計する国― スイスWEEEリサイクル最前線
今回も本コラムをお読み頂き誠にありがとうございます。日本シーム 岩渕でございます。今回はコラムシリーズ初登場の国、スイスでございます。欧州を中心に多くの国を訪ねておりますが、スイスはトップクラスに物価の高い国でございました。なんと、500mlのミネラルウォーターが5フラン(訪問当時のレートで約900円!!)、マクドナルドのフライドポテトも1000円前後と、ポテトと水で2000円コースになるリッチ(?)な国でございました
さて、それでは早速本編に移りましょう。昨年末、私はスイスのWEEE(電子電気廃棄物)リサイクラーであるImmark社のソーティングセンターを訪問する機会に恵まれました。チューリッヒ近郊に位置する同社の施設は、搬入から前処理、破砕、選別という一連の流れが体系的に設計されており、欧州らしい巨大さと高度さを誇っていました。
制度が処理を支える ― 前払い料金が生む安定循環
欧州の家電リサイクルを理解する上でまず重要となるのが、拡大生産者責任を中核とした制度設計です。EUのWEEE指令に代表される枠組みにおいては、電気電子機器の製造者が回収およびリサイクルに対する責任を負う構造が制度として明確に確立されており、その費用は販売時点の仕組みの中で内部化されています。
スイスにおいては前払いリサイクル料金制度が社会に定着しており、回収・物流・処理が一体となった安定的なスキームが機能しています。このように回収量が制度的に担保されることで、認定リサイクラーは長期的な設備投資や運用設計を行いやすくなり、高度な選別ラインを含む設備導入が合理的に進められている点は非常に示唆的でした。
実際の処理現場を観察すると、欧州のWEEEリサイクルでは前処理と高度選別による詳細選別を重要視していることが分かります。まずは初段のプリソーティング工程があり、その後プリシュレッダー、2段目のプリソーティングを経て、プラスチックと金属に選別、ここまでが前処理です。そしてプラ側は専門のリサイクラーへ出荷され、金属は更なる破砕と複合的な高度選別を組み合わせることで高純度の資源回収を実現する仕組みを採用しています。
これに近い手法は日本の家電リサイクラーにおいても広く実践されているものであり、欧州特有の手法というよりは、WEEEリサイクルにおける国際的な共通フローと捉えるべきかもしれません。
火災リスクの共通課題 ― 電池内蔵製品時代のリサイクル
共通という点でもうひとつ。現地のリサイクラーが共通して課題として挙げていたのが、リチウムイオン電池の混入による火災リスクの増大です。近年の小型家電や汎用電子製品は電池内蔵型が主流となっており、回収段階で完全に電池を除去することは現実的に難しいケースも少なくありません。
その結果、破砕工程や保管・輸送中における発熱・発火リスクが顕在化しており、ここ数年でも圏内複数の工場でリチウムイオン電池起因の火災による設備停止・全焼等が報告されています。これはWEEEに限らず、混合系廃棄物を扱うリサイクル設備全般に共通するリスクであり、今後さらに重要性が増すテーマであると感じます。
このテーマについて非常に興味深く感じましたのは、今後の制度変化としての「電池の取り外し可能設計」の義務化です。EUでは新たな規則の下、ポータブル電池を内蔵する製品について、エンドユーザーが工具等を用いて容易に電池を取り外し・交換できる構造を求める方向で制度整備が進められており、段階的な適用を経て2027年以降は設計段階から電池を分離可能な製品が主流になると見込まれています。
既にこの動きを前提とした議論が進んでおり、2026年前後を実務的な設計移行期として認識している関係者が多いと聞きます。この規制の本質は単なる分解性の向上に留まらず、回収後の安全性確保とリサイクル効率の向上に直結する点にあります。これはリチウムイオン電池起因の火災という現在の業界課題に対する制度的なアプローチとしてシンプルかつ有効なものだと思います。
再生できるだけでは足りない ― 化学規制と循環の両立
さらに欧州のWEEEリサイクルを語る上で見逃せないのが、化学物質規制との強い連動です。特に臭素系難燃剤を含むプラスチックの扱いについては、RoHSやREACHの影響を受け、単に物理的に再生可能であるかではなく、再生材としての法的適合性が厳密に問われます。臭素系難燃剤含有の有無により、用途制限の対象となる材料については再生材としての利用が慎重に判断されるわけです。ここには「資源循環性」と「周囲環境の保全」を同時に成立させて然るべき、という思想が表れていると感じます。
今回の訪問を通じて非常に印象に残りましたのは、欧州のWEEEリサイクルが単なる設備の高度化だけで成立しているのではなく、制度設計、製品設計、そして設備が相互に連動している点です。回収スキームによって安定した処理量が確保され、製品側では循環を前提とした設計変更が制度的に促進され、リサイクラーは高度な設備を用いて再生率の向上を目指すという構造は、極めて整合性の高い循環モデルと言えます。
コラムでも何度か触れてきました通り、欧州における容器包装等の動向を鑑みれば、リサイクル工程の高度化と同時に「循環を前提とした設計」という思想はますます重要になるでしょう。
欧州の強みは連動性 ― 制度・設計・設備が一体となる循環
日本の家電リサイクル制度およびリサイクラーの処理技術も国際的に見て高い水準にあると思いますし、前処理から詳細選別という処理フローは既に実務として確立されています。その上で欧州の動向の先進性とは、設備の高度化に加え、制度と製品設計がリサイクラー側の事情と相互に影響を与えるという点にあるのではないでしょうか。スイスの現場で見たものは、高度な設備そのものというよりも、制度設計・製品設計・高度な設備技術の一体化だったように思います。その先進性を鑑みれば、900円のミネラルウォーターにも納得できるかもしれませんね。いえ、嘘です。笑
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