ヨーロッパのリサイクル事情 スペイン編 Vol.3
〜消費者主導で進む環境配慮型経済〜

皆様、新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました。また、月に一度の本コラムをお読み頂き、感謝申し上げます。改めまして、日本シーム株式会社 営業本部の岩渕と申します。心機一転、名を名乗ってからコラム初めとさせて頂きます。

さて、昨年最後のコラムでは、スペインのリサイクルはEUの定める基準よりも厳しいレギュレーションを敷いているというお話をしました。こういった法的規制は、リサイクルを担う企業やプラ製品を製造するメーカーなど、基本的には企業への規制という性質を持つものです。今回は、消費者側の指向や意識についてお話ししたいと思います。

お金と環境、どちらが大切? ~スペインからの問いかけ~

“If you really believe that the economy is more important than the environment, try holding your breath while you count your money.”

突然ですが、これはアメリカの科学者Guy R. McPhersonの言葉です。訳すると「もし本当に経済が環境よりも大切だと思うならば、札束を数える間は息を止めてみればいい」といったところでしょうか。スペインのリサイクル協会であるANARPLAのプレゼンテーションにおいて、その締めくくりにCEOが引用した強烈なメッセージです。少し極端な表現かもしれませんが、経済的利益よりも環境こそ優先すべきであるという考えを端的に表す一文だと思います。

日本と欧州を比較するとき、しばしば「欧州は環境への意識が高い」と漠然と語られます。しかしながら、本当にそうなのでしょうか。より正確に言うと、Guy R. McPhersonの言葉のように、経済的利益を犠牲にしてでも環境を優先するという経済圏ができつつあるのでしょうか。

この問いへの答えは、生産者側と消費者側で異なるように思います。当たり前のことではありますが、生産者側の立場では、あくまでも市場原理に基づいて利益を追求します。そしてその利益追求の過程で損なわれるかもしれない環境への影響をカバーするため、レギュレーションによってコントロールをしているというのが実情だと考えます。

消費者の選択が変える、これからのエコ

一方で、この市場原理に対して大きなインパクトを持つのは消費者側の指向や意識です。ANARPLAのプレゼンテーションでは「消費者の指向によって、生産者は変わらざるを得ない状況にある」ということが繰り返し語られました。特に若い世代においては、商品を選ぶとき、価格だけでなく環境要素も評価する傾向にあるといいます。

実際、食料品や日用品のパッケージでは各社が競うように再生材の使用率を表示し、時には商品名よりも目立つようにデザインされた商品も見かけるほどでした。これは消費者側の指向に応える形で、あくまでも市場原理に基づいて生産者の動向が変わったわかりやすい例です。

あるいは、有名な濃いブルーボトルのミネラルウォーターも、リサイクルしやすくするためにブルーの色を薄くしたといいます。このように、消費者側がリードする形で、生産者側が環境配慮を進めざるを得ないという流れは、最もパワフルで健康的な環境優先へのシフトだと感じます。

しかしながら、この消費者がリードしていくパラダイムシフトには、ひとつ大きな落とし穴があります。それは「本質的に何が環境に良いのか」という点を見誤ると、その経済は誤った方向に進んでいってしまうという点です。そのお話は、また次回。