海洋プラスチック問題について -わたしたちができること- Vol.1

長い間私たちは、捨てることを前提に作られるプラスチック製品を疑問を抱くことなく使い続けてきました。しかしそんなプラスチックの多くはごみとして捨てられ、土や海底に溜まって、ほかの生きもの、そして私たちの健康に悪影響を与えています。ここであらためて、海洋プラスチック問題について、4回に分けてご紹介します。

プラスチックの歴史と急増

プラスチックの発展の歴史

プラスチックのない生活は、現在ではあり得ないと思えるかもしれません。 しかしプラスチックの歴史は実は浅く、一般に広く普及したのは1950年代以降で、その製造と産業の急速な成長は他の多くの人工材料を上回っています。

最初の合成プラスチックは、1907年にレオ・ベークランドによって発明されたベークライトでした。この材料は電気絶縁体としての性質が優れており、電話機や無線機などの製品に広く使われました。その後、様々な種類のプラスチックが発明され、包装材料、建築材料、衣類、医療用品など、生活のあらゆる面で使用されるようになります。 第二次世界大戦中には、金属や他の材料の不足がプラスチックの利用をさらに推進し、戦後の経済発展と共に、プラスチック製品の生産は爆発的に増加し、消費者社会の象徴ともなりました。

製造量の急増

プラスチックの製造量は、20世紀半ばから著しく増加しました。 1950年代には年間約150万トンのプラスチックが生産されていたのに対し、2020年代には年間約3億6000万トン以上に達しています。たった約70年で約240倍に膨れ上がったということです。 世界で製造されたプラスチック総量はというと、1950年から2015年までの65年間で83億トンにのぼり、さらに製造量は増加し続けています。 予測では、今後20年間で倍増し、2050年までには年間11億2,400万トンが製造されるとされています。 この増加は、人口の増加、経済成長、一回性使用製品への依存度の高まりなどによって推進されています。

レオ・ヘンドリック・ベークランド(1863-1944)

海洋プラスチックの影響

大量に生産されているが、行き場の無いプラスチック。 焼却、埋め立ての他にはどこへ行っているのでしょうか? 実は、海には毎分約トラック1台分のプラスチックごみが流れ込んでいます。そしてプラスチックはほとんどが自然に還らずただ細かくなっていき、海洋環境に堆積します。そのうち94%は海底に堆積し、1%が海面を漂い、5%が海辺に流れついています。海には、現在5兆個ものプラスチック片が存在し、これは地球を400周以上できる量です。

-もうプラスチックの海といっても過言ではない状況です。

右の図は、世界の廃プラスチックの行き場を表しています。埋立が46%と大部分を占めています。注目すべき点は、海洋投棄等の不適切処理の割合が 焼却、リサイクルより多いという現状です。

このことは海洋プラスチックごみにより、私たちにとって大切な海、しいては地球が危機的状況にあると言えます。

2021年3月に海洋研究開発機構は有人潜水調査船を使って、千葉房総半島の沖合、水深6000mの海底を調査しました。そこには砂に埋れた大量のプラごみが。中には1984年製のハンバーグの袋もありました。

海洋プラスチックは海洋生態系に甚大な影響を与えています。プラスチックは安く作ることができて、耐久性が高いため、家庭や産業で欠かせないものになっています。しかし、海に流れ込むとその耐久性が問題となるのです。

次回に続く>>