小売がつくる“再生材の出口” —ドイツに学ぶサーキュラーエコノミーの実装力
新年、明けましておめでとうございます。日本シーム 岩渕でございます。本コラムが公開されるのは1月末ですので、だいぶ遅ればせながらでございますが、いつも私のコラムをお読み頂いていることへの感謝を込めて、ご挨拶申し上げます。本年最初のコラム、張り切って参ります。
さて、今回もまた欧州シリーズでございます。昨年末、私にとって欧州では3箇所目の洗浄プラントの視察がございました。コラムの中でもソーティングセンターについては度々触れてきましたが、その先の工程を訪ねた経験は多くなく、非常に印象深い視察となりました。
小売がリサイクラーを持つ意味 ― PreZero Polymersという存在
今回私はドイツのグリンシュタットに工場を構えるPreZero Polymersを訪問致しました。PreZero Polymersは、ソーティングセンターで1次選別された廃プラスチックをさらに選別し、ホットウォッシュ(アルカリ洗浄)等の洗浄を施し、高品質なペレットやフレークを生産する役割を担う2次ソーティング・リサイクラーといった位置付けの企業です。
ひとつ非常に興味深いのは、彼らはディスカウントショップのLidl(リドル)やKaufland(カウフランド)を展開するSchwarz(シュヴァルツ)グループの傘下であるという点です。つまり、小売業を本業とする企業のグループ会社というわけです。
“出口”を持つことが、再生材利用を現実にする
なぜ、小売企業がリサイクラーを保有するのでしょうか。その意味、その意義を考えてみます。 前回のコラムにおいて、再生材使用を阻むハードルの一つに「出口がない」すなわち再生材の用途がないというテーマについて触れました。単にバージンの代替材として「かさ増し」的にしか使えない・・・など、昨年のクローズド・ループ・リサイクル・フォーラムにおいても多く寄せられた悩みの種かと思います。その意味で、製品を消費者へ販売する小売業、さらにプライベートブランドを抱えるような大きな小売グループとなれば、自社のプライベート製品の原料としていくらでも出口を作ることができるのです。実際、SchwarzがPreZeroを設立した背景にはサプライチェーン全体で環境への影響を最小化するという目的があり、LidlやKauflandがその出口として機能しているのです。
驚くべきは、彼らの生産するペレットの品質です。真っ白です。無臭です。一見して容器包装由来とは信じられないレベルの品質を誇っているのです。もちろん、二次選別において白色やナチュラル(透明)を抽出し、黒色の原料は発電へ、雑色はまた他のリサイクラーへ、とターゲットを明確に区別しているという点も大きいとは思いますが、多段式のホットウォッシュ、フレークへの色彩選別、押出における脱気・脱臭など、あの手この手でペレットの品質を極限まで高めていることがその品質の裏付けでしょう。
さらに、最終段にはオゾンを用いた強力な脱臭設備を備えており、彼らの生み出す再生材はフードコンタクト材として使用可能となる認可を受けています。
再生材を「普通に使い続ける」ための事業設計
興味深いのは、この脱臭工程が、樹脂の販売先からの要望を受けて設備されたものではないという点です。「容器包装プラを原料にする以上、臭気対策は不可欠」というスタンスで自ら高度な脱臭設備を採用し、再生材の用途拡大を命題としているのです。
このような考え方は制度面と強く結びついているように思います。ドイツでは回収・リサイクル率の向上だけでなく、再生材利用そのものが強く求められる方向に進んでいます。再生材を「どこかから買ってくる」のではなく、「自分たちで安定的に確保する」ことは、規制対応という意味でも合理的な選択です。
結果として、PreZeroは単なる処理業者ではなく、再生材の品質と供給を自ら設計する存在になっているとも言えるでしょう。これは、再生材利用を努力目標や環境配慮のアピールで終わらせず、日常的に売れる商品へと落とし込むための、極めて実務的なアプローチだと思います。当然ではありますが、日本では、小売あるいはブランドとリサイクラーは動脈産業・静脈産業として明確に区別され、再生材の品質や供給はリサイクラー任せになりがちです。しかしこのケースでは、「再生材を使うと決めた小売業」が、サプライチェーンそのものを組み替えたと見て良いと思います。
ドイツが辿り着いた、ひとつの答え
こうした取り組みは、環境配慮の先進事例というよりも、再生材を「普通に使い続ける」ための事業設計そのものです。この違いが、今後の資源循環のあり方のスタンダードとなっていくように思えてなりません。無理のある循環は続きません。製品品質や採算性が成り立つこのような自然な姿は、循環経済をリードするドイツが辿り着いたひとつの答えかもしれません。
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